WEBマスターって何をするんですか?WEBをマスター(熟達して自由に使いこなせる)している人のこと?WEB担当者と何が違うんですか?
自分もよくそんな質問を受けますし、WEB業以外の人の多くはよくわからない職種だと思います。今回は自分が考えるWEBマスターを元にWEBマスターとは何かを解説したいと思います。
WEBサイトを運営管理する人
WEBマスターとはWEB担当者のことです。Googleが提供している「ウェブマスターツール(現:Google Search Console)」も企業のWEB担当者のためのツールという意味でした。Google Search Consoleになって対象が広がりましたね。
ちなみに海外のWEBサイトには以下のように定義されていました。要するにWEBサイトのコンテンツをマネージメントしたり、WEBサイトのサーバー管理やプログラミングの面倒を見る人ということですね。
A Webmaster is a person who either:
- Creates and manages the information content (words and pictures) and organization of a Web site
- Manages the computer server and technical programming aspects of a Web site
- Or does both.
また日本では以下のように定義されています。
Webマスターとは、自社のWebサイトを運営管理する職業です。一般的にWebマスターの仕事内容に明確な決まりはなく、会社の規模や運営するサイトの特性によっても、その内容はまちまちです。 例えば、情報の更新、メンテナンス、コンテンツの編集、サイト構築・管理といった業務は、いずれもWebサイト運営上必要となる業務である為、Webマスターの業務に含めることができます。大規模なサイトになれば、サイトのリニューアルや宣伝の際の、外部ベンダーのマネジメントといったことも、Webマスターの業務に含まれます。/引用元:Webマスターとは | ELTE Network
ここにもある通り、WEBサイトの規模により「何をするのか」は異なりますが、自分は規模に関わらず「WEBという道具を使って、自社の事業(売り上げなど)に貢献する人」と定義しています。
WEBという扇を使って、事業というヨットの推進力となる追い風を起こすようなイメージです。そのために必要なことは、WEBサイトの制作からバナー画像の作成、SEO、広告運用、ソーシャルメディア運用と何でもするし、できる人(やる人)です。できる人といっても、それぞれの分野の専門家ほどできるわけではないです(人によって得意不得意がありますね)。
自分は大規模なWEBサイトのWEBマスターの経験はありません(やってみたいけど)。出身は中小企業のWEB担当者で、今のクライアントの殆どは社員数5名〜10名程度の小規模事業です。
中小規模のWebサイト運営管理者の場合、1人でサイト運営に関わるほぼ全ての業務を担当することも多く、システムからデザイン、マーケティングまでの幅広い知識が必要とされます。/Webマスターとは | ELTE Network
規模が小さければ予算も当然少なく、コストを抑えるには自力でやるしかありません。ですが、本来は専門家の力を借りながら、企業側代表としてWEBを活用していくべきでしょう。
遠藤が社員数5名以下の零細企業でやっていること
ここからは自分がやっていることやWEBマスターとして必要だと考えていることを書いていきます。
自分の現在の立場は、社員ではなく外部スタッフとしてのWEBマスターです。WEB制作会社や広告代理店と企業の間に入ることもありますが、基本は企業側の人間として立ち居振る舞います。
WEB担当者として1人を正社員として雇うよりも低コストで人材を確保することができますし、社内で使う「時間」の削減にもつながります。その代わり、週5日で会社へ行くことはありません。基本はメールや電話、チャットワーク、Skype、LINEなどで連絡を取ります。必要であれば月1回まではクライアントの会社へ赴くこともあります。
特に契約初期は大幅な改善が必要な場合が殆どですので、月に数回、会社へ訪問してミーティングを重ねます。運用段階へ入り、業務が安定すれば月に1回も行かないこともあります。
現在はWEBサイト制作はしていません。というのもWEBサイトを納品して終わりというのは自分の信念に反するからです。中には「リニューアル」を繰り返して、日々の運用っぽくしている会社もありますが、自分はそういった会社の役には立てません。
WEB担当者になったら、まずやる事
ここからは、もう少し掘り下げて「何をしているか」をみていきたいと思います。
順不同ですが、まず最初にすることです。一言で言うなら「WEBで成果を出すために必要な情報を集める」です。
- 商品、サービスの把握
- 業界の把握
- 一般的なゴールまでの流れの把握
- 顧客属性の把握
- WEBの取り組み状況の把握
- 競合他社のWEBの取り組みの把握
- 社内の体制(人材)の把握
- 外注先の把握
商品、サービスの把握
これは説明する必要はないですね。WEB担当者に限らず、自社が扱う商品やサービスがわからなくては仕事になりません。
業界の把握
これは、自分の場合感が強いのですが、業界の状況によって仕事の仕方(発注や受注)に特徴があることがあります。それを知らずにいるとWEBの施策でズレにつながってしまいます。あとから「え?全然トンチンカンなことやってた!」と時間を無駄にしないためにも、業界の把握をしておきましょう。
一般的なゴールまでの流れの把握
業界の把握にもつながりますが、自社の商品が売れるまでの一連の流れを知らずに、施策は考えられませんね。オフラインでどのように商品やサービスが売れているのかというゴールまでの経路を把握しておきます。
顧客属性の把握
顧客属性。つまりどんな人がお客様なのか?を把握しましょう。耳にタコだとは思いますが「For WHO」がわかっていなければ、何もできません。
誰がわかっていないというのは、北極に行くのかアフリカに行くのか海に行くのか山に行くのかわからずに旅行の準備をするようなものです。
WEBの取り組み状況の把握
ここは凄く大事です。言われなくてもお分かりだと思いますが。現状のWEBサイトの構成を把握します。どんなページがあって、どんな事が書かれているのかも大事ですが、WEBサイトがどんなシステムを使って構築されているのか、CMSを使っている、jimdoのような、どこかのサービスを使っているのかなども大事です。
ECサイトであれば、どんなシステムで構築されているのかは、言うまでもなく重要です。何をしたらどうなるのかを把握しましょう。WEB担当者の仕事には「トラブル対処」も含まれます。何かエラーが生じたときに「たぶん。ここがエラーの原因だろう」と当たりをつけられる必要があります。自動車整備士みたいですね。
問い合わせシステムもどうなっているのかも把握しておきます。WordPressでプラグインを使っているなら簡単ですが、多くはそうではありません。そして、問い合わせでエラーが生じるのは致命的です。何か起こったらすぐに対処できるようにしておきます。
独自ドメインの管理につかっているサービスや、使っているサーバーなども確認が必要です。メールアドレスが新たに必要になったり、新たなPCを購入し、メール受信できるようにしたいというのに対応することも多々あります。ちなみに「特定の送信元から届いたメールは受信したら自動でプリントアウトする」という設定をしたりすることもあります。
またアクセス解析の状況(Googleアナリティクスが導入されているのか?それとも他のツールか?)、ウェブマスターツールが使われているのかも確認しておきます。もちろん数値もです。
ソーシャルメディアアカウントの有無とアクティブ具合、投稿の内容なども把握が必要です。誰が投稿しているのか、投稿に関して誰かの許可を得る必要がある場合もありますので、確認します。
もちろん広告やSEOの状況も確認しましょう。
競合他社のWEBの取り組みの把握
オンライン、オフラインに限らず競合他社の状況も確認しましょう。
特にWEBサイトの確認(掲載内容や取り組みのレベル、ページ構成や動線など)、ソーシャルメディアアカウントがある場合にはフォローして、どんなコンテンツを作っているのか、どんな投稿をしているのか、投稿の頻度はどの程度か、ファンの反応はどうかなどを観察しましょう。
社内の体制(人材)の把握
自分のところへ相談頂く会社様は大抵は社内の体制はできていません。担当者の方がいることもありますが、外注との連絡窓口になっているだけで、WEBについては素人という会社がほとんどです。
ただ、今は担当者ではなくても「WEBが好き」「ソーシャルメディアが好き」「コミュニケーションが好き」など、運用の助けになってくれる可能性がある人がいるかもしれません。そういう方がいるかもしれないので、社内にどんな人がいるのかも把握しておきたいです。
外注先の把握
WEBサイト制作会社に依頼をしていることも多いので、外注先の把握はしておきます。外注先の業務範囲も確認しておきます。
業務を侵害するのは良くないですし、よほどの悪徳会社でない限り、侵略は良いことではありません。お互いにクライアント会社の売り上げに貢献するために協力していける状態を模索します。
自分の場合は費用の見直しをすることもあります。小規模事業において支払いすぎているような場合には改善の助言しますし、コスパが良いときは「コスパが良いですよ」ということも話します。
情報集めは大事ですが、情報集めばかりしていてもWEBでは成果は出ません。情報が揃うのを待っているよりも、さっさと先へ進みましょう。
把握が済んだら施策を立てる
情報を集めたら、WEBの施策に落とし込んでいきます。細かく書いていくと大変なので、大まかな流れだけ書いておきます。
- 会社としてのWEBのゴール設定
- ペルソナの作成
- ゴールするための施策づくり
- 施策の実行
会社としてのWEBのゴール設定
まずは会社としてWEBで何をしたいのかを明確にしましょう。商品を売りたいのか、認知を広げたいのか、既存顧客との関係性を良くしたいのか、見込み顧客のリストを作りたいのか、など会社ごとにWEBで何をしたいのか、どうなったら成功と言えるのかを決めましょう。
どんなゴールであったとしても「誰に」という問いを立てて、回答を明確にしましょう。
ペルソナの作成
WEB施策を考えるのに「ペルソナ」づくりは重要です。ゴール設定で決めて「誰に」をより具体的にします。
ペルソナと現実がどれだけギャップなくできるかで、WEB施策の成果も変わってきます。いきなりペルソナと現実のギャップが無いというのは難しいので、ペルソナもWEBの施策を実施しながら修正をして作り上げていきます。
またペルソナが1人でなければいけないということはありません。必要な人数分を作りましょう。
ゴールするための施策づくり
「ゴール」が決まり「誰に」も決まりました。ゴールを達成するために、何をするのか(なにをしないのか)を決めましょう。
「誰に」が明確になっていれば、何をしたらいいのか、何が必要なのか、WEBサイトで何をすべきなのか、Facebookなどで何をすべきなのかも見えてくるはずです。
施策づくりには「仮説づくり」の要素も多いに含まれます。初めから100点を求めず(求め始めるといつまでも動けなくなってしまいます)に、まずはやってみて、徐々に100点を目指して改善を繰り返していきます。
自社内でできることは、極端な言い方をすればコストはかかりません。どんどん実行していきましょう。
施策の実行
施策ができたら、実行に移していきましょう。WEBサイトのページ(コンテンツ)づくり、Facebookページの運用、Twitterの運用などを進めましょう。
自分の場合は「コンテンツづくり」に関して、ブログを書いてもらったり、写真を撮ってもらうのはクライアントの会社の方にお願いをしています。
写真などを自分が撮影に行くことはありますが、ブログは「一次情報」が何よりも大事ですので、自分が書けることには限界がありますし、浅い内容しか書けません。
また頂いている費用からも動画コンテンツや自分が取材してブログを書くのはオプション(別料金)にしています。
また「広告運用」もする場合もあります。最近はFacebook広告を運用することの方が多いです。
WEBを運用する
いよいよ運用段階です。自分が関わることに終わりはあっても、「運用」に終わりはありません。企業が存在して、WEBへ取り組む限り運用は続きます。
運用は、ホノルルマラソンに出場してゴールするために、自分がどれだけ走れるのかを把握して、ホノルルマラソンに出場できるようにトレーニングをプランニングした後の日々のトレーニングです。
運用なくしてWEBの活用はないというのが自分の信念です。
- 施策の継続
- 施策の改善及び改善に必要な情報収集
- WEBサイトの管理
運用のメインは施策の実施と改善です。改善には、施策の結果(数値)や実際にお客様と接点のある人からのヒアリングなどを基に進めます。
数値も大事ですが「現場の声」も非常に重要ですし、有益です。
WEBサイトなどの管理
運用と共にWEBサイトやソーシャルメディアアカウントの管理も大事です。サイト管理には利用しているツールの支払いなども含まれます。支払いを自分がするわけではなく、支払い忘れでツールが使えなくなってしまったりなどがないようにすることも必要です。
以下に少しだけ例を載せておきます。
- WordPressなどシステムのアップデート
- エラーの対処
- WEBページの文字や画像の差し替え
- サーバー管理
- 施策に必要なシステムの実装
- モバイル対応
管理にはシステムの実装なども含みます。自分も先日、クレジットカード決済システムの実装なども対応しました。最近はAmazonへの出店業務も進めています。
小規模企業では、WEB・ITに関わることは何でもやる
WEB担当者の仕事は「企業の売り上げに貢献するWEB活用を実現する」ことであり、それに必要なこともすべてWEB担当者の管轄であると自分は考えています。
もちろん全てを自分一人でこなすわけではありません。予算にもよりますが、自分が無理してもトラブルにつながってしまうので、専門家の力を借りることもあります。プログラミングやシステム構築、WEBデザインなどは外部の専門家と協力することも必要です。
とはいえ、予算が確保できない場合は、できる範囲内で自分がやります。その場合には「施策」からできる範囲内での最善策を考えます。
またクライアント会社の内部の人にタスクが発生している場合には、タスクをこなしてもらうようにせっつくこともあります。他にも社長がどこかで聞きかじってきたWEBの施策(手法)や電話営業を受けてほだされてしまった思考を踏み外して痛い目に遭わないように説明したり修正したりすることもあります。
百聞は一見に如かずなので、「忠告」を記録に残した上で痛い目にあってもらうこともあったり、なかったり。(笑)
最後に今回、提示した内容はあくまでも遠藤的な視点と思考に基づくものです。これが必ずしも正しいとは限りません。また各会社に応じて「あるべき姿」は異なっていいものだとも思います。大事なことは「会社の事業が成功していること」です。
- ウェブマスター – Wikipedia
- Webmaster – Wikipedia, the free encyclopedia
- 第6回 Webマスターの仕事と取り巻く人々 | Webデザインとグラフィックの総合情報サイト – MdN Design Interactive –
- Webマスターのホントの「仕事」って?動かすのは「自分の頭」と「人の気持ち」です。: コラム | NECマネジメントパートナー
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