こんにちは。遠藤(@webmaster_note)です。Wix.com Japanの日本法人代表の積田様とコミュニケーションズマネージャーの間島様にお話を伺った「最新のWix」の第二弾です!
遠藤
今回は、2021年に登場したモバイルアプリを作ることができる「マイアプリby Wix」についてです。
積田英明 様
Wix.com Japan株式会社 日本法人代表
2007年に当時のマイクロソフト株式会社に入社し、同社エンタープライズ向けクラウドサービス大手顧客を担当。2012年Evernote日本法人へ入社し、法人向けサービスの立ち上げ等を主導。その後、日本およびアジア太平洋地域の統括を担う同社日本法人代表を経て、2019年1月にWix日本法人代表に就任。日本法人立ち上げやNTTタウンページ社との戦略的業務提携の締結をリード。日本市場のさらなる開拓に向けた事業戦略やパートナー戦略を統括している。
間島ゆかり 様
Wix.com Japan株式会社 コミュニケーションズマネージャー
Wix日本法人にて、マーケティング全般と広報を担当。2019年に第一号社員として参画し、日本法人の立ち上げに従事。日本市場での認知拡大、ユーザー数増加を目指して、コミュニケーションに関わる施策の立案及び実行を行う。Wix入社以前は、Evernoteでの広報・マーケティングや青年海外協力隊(バングラデシュ)での活動など幅広い経験を有する。
※記事内で掲載しているスライドはWix.com Japan様からご提供を頂きました。
Wixのマイアプリとは
遠藤:マイアプリby Wixとは、どんなサービスなのでしょうか?
間島さん:マイアプリby Wixは、2021年に発表した新しいサービスです。ウェブサイトオーナーの方々が、ご自分で完全にブランディングをして、独自のネイティブモバイルアプリが作成できます。
マイアプリをつくるにあたり、Wixの社内で、ネイティブモバイルアプリの効果について調査しました。ネットショップにおけるウェブサイトごとの取引数は、ネイティブモバイルアプリを使った場合と、まったく使わないでウェブサイトだけで取引をした場合では、モバイルアプリを使ったほうが取引数が2.6倍になったという調査結果になりました。
間島さん:ネットショップ以外にも、例えばフィットネスの予約サイトで、モバイルアプリを使った場合と、使わなかった場合の予約数を比較したところ、使った場合のほうが6.1倍になったという結果でした。独自のブランディングされたアプリを使うことで、お客さまに予約や購入をしていただけたという効果が出ていました。
WixのEコマース決済全体におけるモバイルからの決済の割合は、いま、67%となっています。モバイルからの売上額も、デスクトップと比べると2.6倍となっています。こうした背景があったので、今回、マイアプリby Wixというものをユーザーさま向けに提供することになりました。
1行もコードを書かずにアプリ作成ができる
遠藤:マイアプリby Wixの特徴は、どんなものがあるのでしょうか?
間島さん:いちばんの特徴はブランディングです。マイアプリby Wix以外のモバイルアプリでは、ロゴや説明のところにWixと入ってしまいます。マイアプリby Wixでは、Wix色が一切なく排除された状態で、お客さまの会社名やブランド名やロゴを追加してモバイルアプリを作ることができます。さらに作成したアプリをAppleストアやGoogle Playストアで自社ブランドのアプリとして配信できます。
完全ノーコードなので、エンジニアリングの知識がない方でも、1行もコードを書かずにアプリ作成ができるのも特徴です。
間島さん:アプリ制作時のカスタマイズ性も高く、コーポレートカラーなど、お好きな色味に合わせたりできます。テキストも、ヘッダーに何を入れるとか、ここではこういう文字を入れるとかも、好みの仕様にカスタマイズできます。
また、ウェブサイトで使っている機能をそのままモバイルアプリでも使えます。例えば、Eコマースだったり、サービス予約だったり、ブログなどの機能も、アプリをつくった時点で、すべて統合されているようになっています。
オーナーさま、ウェブサイトオーナーさまが、マイアプリを何か更新した場合に、ユーザーの方は、それをいちいちAppleストアとかから更新する必要はありません。自動的に同期されるようになっています。
アプリの機能として、お店や会社を好きになっていただけるような機能もあり、ロイヤリティーの構築もできます。例えば、キャンペーンのお知らせや季節のご挨拶などを「プッシュ通知」で送ることができます。他には、オーナーさまとウェブサイトのメンバーで、チャットを使って連絡をしたり、ブログでコメントしあったりも可能です。
マイアプリはWixでウェブサイトを作っている人向けのサービス
遠藤:アプリはウェブサイトがないと作れないのでしょうか?Wixでウェブサイトを作っていない人でもアプリだけ作成することはできますか?
間島さん:ウェブサイトを持っている方が使うものになります。というのも、Appleへの申請の途中で、ウェブサイトのURLを入れてくださいという項目があるのです。そのためウェブサイトを持っていないとアプリを配信できません。
またWixを利用していないとマイアプリby Wixは利用できません。Wixのサイトと連動して、ネットショップや、サービス予約など使えるので、Wixのサイトを持っている方が使う製品ということになります。
遠藤:マイアプリby Wixを利用する際の注意点はありますか?
間島さん:注意して頂きたいのは、現時点ではGoogleとAppleの規約で、オンラインヨガ教室のような「オンラインサービス(オンラインでしか提供していない)」はアプリに組み込むことができません。そのためオンラインサービスが含まれていると、申請のときに弾かれてしまいます。
ウェブサイトにオンライン予約があるのは問題ありませんが、アプリをつくる際は、オンライン予約だけ消していただくことになります。オンラインのレッスンの受付は、引き続き、ウェブサイトから提供していただくという感じになります。
対面のレッスンであれば問題ありません。あとは、ECはまったく関係ないので、アプリでもそのまま使っていただけます。
ブランドを意識して、ファンとより強いエンゲージを作りたいときにアプリの魅力が発揮できる
遠藤:個人的に、アプリは開発コストやユーザーの利用など、中小企業がアプリを作ることに必要性を感じないことが多いのですが、アプリと相性がいいのは、どんな状況なのでしょうか?
積田さん:遠藤さんのおっしゃるように、どうしても開発とかの工数で、何十万、何百万って、なかなか結果が見えない中で、初期投資にかけるのはけっこう勇気のいることだと思います。
マイアプリby Wixなら月額プランの場合は、現時点で、月に1万円台からノーコードで、自分たちのアプリが作れます。私も、元々、大学でエンジニアの勉強をしていたので、この予算でアプリがつくれるのは夢みたいだなと思っています。実際、そこに魅力を感じて、ご評価いただいて、ご利用いただくことが多いです。
ただ、アプリを独自で必要とする方というのは、全員ではないと思っています。一方で例えば、強いファンの方や固定客の方がいて、その人たちを引き留めたい場合や、独自の世界観とかを出す方には、アプリが合っていると思います。
単純に、取引数とか、全体の売上総額だけではなく、新規の人がどれくらいいるんだっけとか、既存のファン層の割合を考慮して使う方が多いです。とくに「ブランド」を意識して利用される方が多い印象があります。
間島さん:私たちがおすすめしているのは、立ち上げたばかりの場合、これから新規の方をどんどん獲得していくので、マイアプリは絶対必要というものではないと思っています。ある程度、リピーターのお客さんがいらっしゃって、良い流れがきていて、よりファンになってもらうという段階で使っていただくのが良いと思っています。
マイアプリは有料なので、よりブランディングを意識されたい方とか、モバイルアプリまで自分の世界観にしたいという方(Wixのロゴなどを入れたくない)に使っていただくのをオススメしています。
一方で、そこまでいらないけれど、モバイルからも予約を受けたいという方には、Spaces by Wixという別のアプリを提供しています。Spaces by Wixは完全に無料で使えるので、Spaces by Wixで様子を見てから、けっこういけるなと思ったら、マイアプリby Wixに変えていただくというのもありだと思います。
アプリ制作でつまずきやすいレギュレーションも作成手順に沿ってスムーズにクリアできる
遠藤:アプリをつくるときは、Wixでウェブサイトをつくるのと同じように作ることができるのですか?
間島さん:はい。基本機能に関しては、すでにウェブサイトで使われているものが、そのままアプリにもインストールされます。細かい編集をされたい場合は、サイトオーナー用のアプリを使って編集していただくという形です。
積田さん:アプリを作成する手続きのところでも、はじめてだとレギュレーションなど、分からないと思うんです。AppleやGoogleのレギュレーションは、Wixで管理できないところでもあります。たとえば、アイコンの画像サイズであったり、アプリ名のガイドラインであったりも、手順の中で表示されます。
デザインからテキストの入力、AppleおよびGoogleの開発者用アカウントの作成、接続、アプリの提出まで順を追って進めていけば迷うことはありません。申請が却下された場合でも、手順にしたがって修正し、再提出することができます。煩雑な作業をなるべく意識せずに、利用者の方が手軽に分かりやすい方法で申請できるというのも魅力の一つかなと思っています。
ウェブサイト制作業の人にも、マイアプリは新しいビジネスチャンスになる
遠藤:ウェブサイト制作と関連付けてアプリ制作もできそうですね。ウェブサイト制作やアプリ開発をしている方からの反応はどうなのでしょうか?
積田さん:Wixパートナーさんから「ノーコード、ローコードがどんどん市場に増えていく中で、制作やクリエイティブを生業としている方を苦しめるようなことになるのでは?」と言われることがあります。私はむしろ逆だと思っています。デザイナーの方とか、クリエイターの方が本業に集中できるというか、煩雑なことを省いて、生かせるところがどんどん増えてきていると思っています。
プロでない方は、使いはじめは自分たちでWixを触る方も多いのですが、最終的にプロにお願いする方が多いです。そういったところでもWixパートナーさまのお力もお借りしながら、さらに、エンドユーザーの方にご活用いただけるような、皆さんがハッピーになるような事例を、どんどん、日本でもつくっていきたいなと思っています。
間島さん:ウェブ制作者の方だと、マイアプリ自体が新たなビジネスになると思います。簡単にできますと言っても、なかなか忙しい社長さんだと、自分でつくっている暇がなかったり、センスの良いコピーが考えられないという方もいらっしゃると思います。今後、モバイルアプリからウェブサイトまで全部やりますよというご提案ができるという意味では、ウェブサイト制作者さんの新たな収入源にもなるのではないかと思っています。
積田さん:特に中小企業の方になると、忙しいし、本業があるのでウェブサイトやアプリの運営まで手が回りません。マーケティングやブランディングの視点は、総合格闘技のような要素が必要になってくるので、運営も含めてアドバイスができるのが、Wixパートナーさまです。
利用者の中小企業の方も「ここは自分でできるよ」というところもあると思います。いまのWixでは管理権限など細かいことが設定できるようになっているんです。デザインを下手に触られたら描画が崩れてしまうということを避けるためにブログの記事しか触れないようにする。そういったものも含めて、Wixパートナーさまがエンドユーザーさまの伴走者になるような形の素晴らしい事例をどんどんエンドユーザーさまと一緒につくっていきたいなと思っています。
最後に
最近のWixで気になっていた「マイアプリby Wix」。Wixのお二人にお話を伺うまで、個人的に中小企業がアプリを作る意味が見いだせずにいました。製作コストや運用コストを考えると、どこまで利益を生み出せるのかを考えると成功のイメージが持てていませんでした。
ですが、積田さんと間島さんのお話を伺うことで、モバイルアプリが有効な場面のイメージを持つことができました。ある程度の固定客がいて、さらに関係性を深めたいようなときにはモバイルアプリは有効かもしれません。
またモバイルアプリを月額1万円台という低コストで簡単に作成できるのは、Wixでウェブサイトを作成する理由にもなりそうです。
Wixでウェブサイトを運営している方で、モバイルアプリを作ろうと検討している方は、マイアプリby Wixを使ってみるのは全然ありなように思えます。もしうまく活用できたときは、お話を伺いたいので、ぜひご連絡下さい!