「ステマはダメ」という話や「広告表示をすればいい」という話は、当たり前なので、いまさら考えることではありません。ですが、情報発信をしている身としては「グレー」感を感じる時もあるし、広告コンテンツではない投稿で「広告ではないよ表記」をした方がいいのかな?といろいろと考えや思いを巡らせてみました。
こればっかりは、情報発信をしていない人やある程度の影響力を持っていない人には、わかりづらいかもしれませんが、6000字ぐらい書いちゃいましたので、興味のある方だけお読み頂けたらと思います。(議論や討論をする事自体が好きではない人には向いていません)
ステマ(ステルスマーケティング)とは何か?
ステルスマーケティングとは一言で言うなら「サクラ」です。商品やサービスの販売者が客ではない人に依頼し報酬を支払って「客」を装わせて「商品をほめる」「良い評判を広める」行為です。
新店舗のオープン時に店舗が人を雇って行列を作らせたり、満席にしたり、セミナーなどで参加者に「参加者になりすました部下」を紛れ込ませるなど、昔からあるやり方ですね。
WEBでもよく問題になりますが、有名ブロガーなどに商品やサービスについて「宣伝」と気付かれないように紹介記事を書いてもらったり、販売側が消費者を装ったブログを作り、自社の商品やサービスについて賞賛したり、プラスになる内容の記事を投稿したりすることも「ステマ」です。
「ステルス」といえば「ステルス戦闘機」を思い浮かべる人もいるかもしれません。レーダーで補足されないように作られた戦闘機ですね。また、ステルスの意味は「隠密」「目立たないように」「こっそり」などがあります。
「商品・サービスを提供する事業者(または広告代理店等協力者)が、中立な立場を装って消費者を騙し、“本来は得られない高い評価”を広めようとする行為」/引用元:企業法務マンサバイバル : 日本におけるステルスマーケティングの法規制まとめ(追記あり)
↑の表現は簡潔で分かりやすいですね。
2012年から消費者庁も問題視している
楽天市場で11万件もの「やらせ投稿」が発覚したのが記憶に新しいですが、今でもステマは行われています。
ですが2012年5月9日に消費者庁は「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部を改定し、口コミサイトへ口コミを投稿させる行為についても言及しています。
○ 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に 依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを 多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当 該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する 商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価 を受けているかのように表示させること。 /引用元:インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示 法上の問題点及び留意事項」の一部改定について
○ 広告主が、(ブログ事業者を通じて)ブロガーに広告主が供給する商品・サービスを宣 伝するブログ記事を執筆するように依頼し、依頼を受けたブロガーをして、十分な根拠が ないにもかかわらず、「△□、ついにゲットしました~。しみ、そばかすを予防して、ぷ るぷるお肌になっちゃいます!気になる方はコチラ」と表示させること4 。 /引用元:インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示 法上の問題点及び留意事項」の一部改定について
他にも「フリーミアム」「フラッシュマーケティング」「アフィリエイトプログラム」についても記載されていますので、一読されることを進めます。
景品表示法違反になることも
法律的なところは専門外なので明言を避けますが、景品表示法や不正競争防止法の違反になる可能性があるようです。
景品表示法においては、優良誤認表示(実際のものよりも著しく優良であると示すこと)が禁止されています。/引用元:楽天に「やらせ」の口コミが11万件! ステマって違法なの? | シェアしたくなる法律相談所
インターネット広告推進協議会がガイドラインを策定
2015年3月18日にインターネット広告推進協議会が「ネイティブ広告(通常の記事と同様に作られた広告コンテンツ)」に関するガイドラインを策定しました。このガイドラインでは「ネイティブ広告」は「広告」「PR」「AD」などの表記を必ず行うこととしています。
アメリカやイギリスでは違法
海外での「ステマ」に対しての対応ですが、アメリカでは連邦取引委員会によって「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」が策定され、広告や宣伝であることが明示されおらず、販売者と投稿者(ブロガーなど)に利益供与があった場合には違法とされています。
またイギリスでも「不公正取引から消費者を保護するための法律」のよりステルスマーケティングは違法とされています。
実際にあったステマ事例
過去に大きな騒ぎを起こしたステルスマーケティングの事例を少し載せておきます。
ペニーオークションの芸能人ブログステマ問題(2012年)
芸能人がペニーオークションで商品を落札したと嘘(実際には落札していない)の内容をブログで投稿し30万円〜100万円を超える報酬を得ていたとして問題になりましたね。
これは単純に「依頼されたのに消費者を装った」ステマですね。
問題視された芸能人の投稿には「(業者から提供された)高額商品を所持している場面」や「オークションで低額で落札している場面」を写真として貼っていることや記事タイトルを含め文章で具体的な金額を明示して格安だったことを強調したことなどが多く共通しており(一部例外あり)、特定のペニオクサイトを名称とアドレス付きで紹介していた。また、これらのステマでは高額商品以外にも5万円[22]から40万円[23]までの現金がサイト業者から紹介料として芸能人へ動いていたことが判明した(現金を受け取っていないと主張する芸能人もいた[24])。/引用元:ペニーオークション詐欺事件 – Wikipedia
食べログ事件(2012年)
食べログの利用者が書き込む口コミ投稿で、報酬を得て、その店の評価を上げる投稿をし、ランキングを上げる業者がいたことが発覚。
さらにYahoo知恵袋でも「オススメのお店は?」といった質問に対して、消費者を装って「この店が良いよ」といった投稿もしていた。
挙げ始めたら切りがないステマ事例
他にもステマ事例は上げ始めると切りがないほど沢山あります。つい先日も山本一郎さんがサイバーエージェントのステマ問題についての投稿をされていました。
以下、他のステマ事例の参考記事です。とはいえステマ事例は、バレたものですので、成功しているステマ事例は出てこないので氷山の一角でしょう。
ステマ事例は、バレたものですので、成功しているステマ事例は出てきません。
あらぬ疑いをかけられるかもしれない
ステルスマーケティングとは、実際の口コミや紹介を装うことです。逆を返せば、全ての口コミや紹介、評判がステマである可能性があるということですね。
FacebookやTwitter、YouTube、ブログなの投稿(シェアを含む)もステマではないのに「ステマだ!」と言われる可能性も大いにあり得るわけです。
いくら企業がステマの定義を明らかにし、ステマにならないコミュニケーション活動を行おうとしたとしても「ステマだ!」という人が現れる危険があるということです。/引用元:「ステルスマーケティング」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!- SMMLab(ソーシャルメディアマーケティングラボ))
ブログでの商品やサービスの紹介
WEBマスターの手帳でも、WEBサービスを紹介しています。それゆえ「うちの商品を紹介して欲しい」「うちのサービスの記事を書いて欲しい」という連絡を多々頂きます。
運営ポリシーとして、自分が使っていない(試していない)ものは書きませんし、オススメもしません。とりあえずアカウント登録して機能をひと通り試した時には書きますが、使ったこともなければ、いいなと思っていないものを勧めることはありません。
もし今後、依頼されて報酬を得て書くような場合には「宣伝」であることを明記しますが、読者の人からは明記がなければ判断できないでしょう。これは裏を返すと、依頼されているわけでもなく「勝手に紹介している」場合に「これは勝手に紹介しています。紹介しているWEBサービスとの関係はありません」といちいち表記しておかなければ誤解されることがあるということです。
2012年3月に発表された「ステルスマーケティングに関する意識調査」(株式会社PR TIMES調べ)※の、どのような事例がステマに相当するかという質問では、「対価の受け取りや商品提供を明示した上で、個人ブログで特定の商品を紹介する」をステマだと捉える回答者が、広告関係者が29.1%だったのに対し、一般男女が42.0%、2ちゃんねらーでは55.1%と、その認識に大きな格差があることを明らかにしました。/引用元:「ステルスマーケティング」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!- SMMLab(ソーシャルメディアマーケティングラボ)
表記していても「ステマ」だと思われる可能性が、かなり高い。
これはWEBマスターの手帳に限ったことではありません。すべての人が口コミをする際に「相手との関係性(報酬の有無)」を明記しなければいけないということにもなりかねません。
例えば知り合いが新しい商品を売り始めた、試しに使ってみてよと言われて試しに使ってみたところ、いい商品だったのでソーシャルメディアでシェアした。ただし、「試しに使ってみてよ」と言われた時の食事代はおごってもらっていたことを明記せずに。
これも人によっては「ステマだ!」と受け取る人がいるかもしれません。(さすがに、そこまで歪んだ人はいないと思いますが)
ステマと「口コミ」は外部からは見分けがつかない。だからこその「ステマ」なのですが、ネガティブ視点で見られると「広告表記のない、ありとあらゆる口コミ」がステマかも?と疑われる可能性を持っているわけです。
また、どこのポイントで騙されたと感じるかの沸点は人それぞれです。騙す気は全くなくても騙されたと感じてしまう人がいるかもしれません。
この点については「ステルスマーケティングへの「対策」について / 山口浩 / 経営学 | SYNODOS -シノドス-」での考察が凄く共感出来ました。
消費者が口コミを信頼しすぎている
口コミとは本来は「信頼している相手からの情報」であって、仲の良い友人やご近所さんなど「情報提供者がどんな人なのか」を知って考慮した上で「信頼」が発生するものです。
しかし、これだけWEBやソーシャルメディアが普及し、「情報提供者がどんな人なのか」が抜けた「口コミ」を僕らが信用しすぎているのではないかとも思います。
WEBに書かれていることをノンストップで信用するのではなく、誰が書いているのかまで意識できるようになると、ステマはなくなるのかもしれません。
そこまでリテラシーが高くなることはなさそうなので、恐らくステマもなくならないのでしょう。
見ている人との信頼関係を築く
FacebookでもTwitterでもブログでも「この人が言っていることは信用できる」と思ってもらえるかどうかですね。
広告でもなんでもない投稿に毎回、紹介しているモノや人との関係を書くのもクドいので、ポリシー表記などしておく必要はありますね。
どこまで保険をかけるのか、防衛策を取るのかは人それそれだと思います。「信頼は1日にしてならず」日頃の投稿の積み重ねが一番の防衛策でしょう。
知らぬ間にステマしているかも
以下に挙げることが「ステマ」であるとは言いません。ですが「ステマ」かどうかを判断するのは当事者ではなく、その情報に接した人です。
「いじめ」と同じく、当事者はそうだと思っていなくても、外から見て「いじめだ!」と言われたら「いじめ」になってしまうのです。
- 知人の書籍の感想をamazonレビューに頼まれて投稿する
- NAVERまとめで自社を含むまとめを作成する(自社との関係性の表記なし)
- 知人のお店のレビューを口コミサイトへ投稿する
他にもいろいろとシチュエーションはあると思います。純粋なレビューと、フィルターがかかったレビューでは、レビューとしての受け取り方は変わる(誤った印象を与える場合もありえますよね。
ステマにならないためにすべき7つのこと
最後に「ステマ」にならないようにするにはどうすべきなのかを挙げておきます。
- 必ず「広告」「PR」「AD」などの表記する
- 依頼されていることを隠さない(宣伝であることを伝える)
- 一般消費者を装わない
- 商品やサービスとの関係性を明記する
- 評価を誇張させる誤解を与えない
- 虚偽の記載をしない(買っていないのに買いました!など)
- 日頃から自分の発信する情報を受取る人との信頼関係を築く
また献本や献品、試し利用があった場合には、その旨をしっかりと明記しておきましょう。
PRを依頼する場合には、広告表記をしてもらい、「依頼されて書いていること」を明記してもらいましょう。また記事の内容に関しては指図してはいけません。良いことも悪いことも書いてもらいましょう。